- 医師賠償責任保険への加入は必要か?
- 保険料を最安に抑えるにはどこで頼めばいいの?
- 補償内容が充実した保険を選びたい!
皆さんは、医師賠償責任保険に加入していますか。医療訴訟による賠償金額は多額になることもあり、過去には数億円という判例も存在します。既に加入している先生方も多いことでしょう。
医師賠償責任保険と一口に言っても、契約先は数多く存在します。その上、契約先によって保険料に大きな差があることも事実です。
同じ補償内容なら、できるだけコストの安いものがいいですよね。この記事では、医賠責の各申込先における保険料とメリットを徹底比較。読んで頂ければ、最適なプランを見つける一助になるでしょう。
年齢や補償内容によって、おすすめの契約先は変わります。比較すると以下の通り。
支払い限度額 1事故/期間中 | 日本医師会 (通常) | 日本医師会 (会費減免適用後) | 各種学会 | 民間医局 |
100万円/300万円 | – | – | 4,000円 | – |
5千万円/1.5億円 | – | – | – | 32,310円 |
1億円/3億円 | 31歳以上64,000円 30歳以下39,000円 研修医21,000円 | 31歳以上36,000円 30歳以下15,000円 研修医15,000円 | 40,660円 | 41,660円 |
2億円/6億円 | – | 51,570円 | 47,710円 | |
3億円/9億円 | 特約保険 +20,000円 | 特約保険 +20,000円 | 62,400円 | 53,360円 |
それぞれの状況に応じておすすめのプランを抜粋してみました。
30歳以下・卒後5年以下 1事故1億円の補償額 | 日本医師会 15,000円 |
31歳以上・卒後6年以上 1事故1億円の補償額 | 民間医局 41,660円 |
1事故2億円以上の補償額 | 民間医局 47,710円 |
医師生活のコスト削減のためにも、ぜひご活用ください。
医師賠償責任保険は本当に必要か?
医師賠償責任保険は医師が訴えられた際に、賠償金を補償してくれる保険です。
種別は損害保険。医師による医療行為が原因で患者の容体が悪化するなど、患者に損失を与えたことで、損害賠償責任を求められた場合に補償されます。
補償額は100万円~3億円
補償額は契約先によっても取扱いが異なりますが、1事故あたり100万円から数億円をカバーするプランもあります。
100万円のプランは日本医師会の免責金額をカバーする意味合いが強く、メインの保険は1億円以上のプランを検討することになります。
補償範囲は賠償金だけではない
医師賠償責任保険では、法律上の損害賠償金を補償。それだけでなく、プランによっては、争訟費用(敗訴した場合に医師が負担)や弁護士費用も補償してくれます。
医師賠償責任保険の補償対象外となる医療行為
次の医療行為は補償の対象外です。
- 重大な過失がある場合
- 美容医療の一部
- 海外での医療行為
なお、美容医療専用の賠償責任保険もあります。
加入率は7割以上
勤務医を対象としたアンケートでは、7割以上の医師が医師賠償責任保険に加入していると回答。
実は病院側でも病院賠償責任保険に加入しており、医療機関で生じた損害賠償責任も保障してくれることになっています。
しかし、最近では、病院だけでなく個々の医師も同時に訴えられる事例が増加。その結果、病院の賠償責任保険だけでは、全てを保障できない場合があるのです。
このような背景から、医師個人による医師賠償責任保険の契約件数は増えています。
医師賠償責任保険の主な引受保険会社は3社
医師賠償責任保険は損害保険の一つですが、加入者は基本的に医師のみ。一般的な損害保険と比べると、加入者数も限られています。
そのため、医師賠償責任保険を取扱う引受保険会社は、大手の3社のみです。
- 東京海上日動火災保険株式会社
- 損害保険ジャパン株式会社
- 三井住友海上火災保険株式会社
ただ皆さんには、医師会や学会など様々な団体から保険の申込書が届くと思います。引受会社は同じでも、申込先となる代理店や団体はたくさんあるのです。
代理店や団体経由で使える団体割引
代理店や団体を介して医師賠償責任保険に加入すると、団体割引が受けられます。割引率はほとんどの申込先で20%OFFです。申込先の違いで変わる数字ではありません(一部15%のところもあります)。
多くの保険のパンフレットに「団体割引で20%OFF」と大々的に掲載されていますが、直接でなければ実はどこで申し込んでも一緒なのです。
東京海上日動に直接申し込んだ場合と、民間医局を経由した場合を比較してみました。
1事故/期間中 | 民間医局(団体割引) | 個人契約 |
1億円/3億円(100型) | 41,660円 | 50,820円 |
2億円/6億円(200型) | 47,710円 | 64,460円 |
割引されていることが分かります。
医師賠償責任保険の申込先はたくさんある
医師賠償責任保険の申込先には、次のような団体があります。
- 日本医師会
- 各種学会
- 病院個別
- 各大学医学部の同窓会
- 民間医局
引受保険会社が同じでも、契約内容は申込先によって変わります。保険料にも差が出てくるので、どの窓口で申し込むかは重要な問題です。
それぞれの学会については、カイトーや銀座エージェンシーなど代理店が仲介。同じ代理店でも学会によって、異なるプランを用意しているところもあります。
医師が適切な保険金額を選定するためのポイント
医師賠償責任保険を選ぶ際に見るべきポイントは次の4点です。
- 支払限度額
- 保険料
- 免責金額
- 手軽さ
支払限度額は1億円では足りない?
支払限度額は、保険会社がいくらまで補償金を支払ってくれるかという金額です。1事故あたりと保険加入期間中でそれぞれ設定されています。
多くの申込先で1事故あたり1億円が採用されていますが、2億や3億円のプランを提供しているところもあります。
もちろん現在の働き方のリスクにもよりますが、過去の判例を遡ると1億円以上の損害賠償金が発生したケースもあります。
より安心感を得たいなら2億円のプランも選択肢でしょう。
日本医師会経由で申し込む保険は、1事故あたり1億円のプランしかありません。ただし任意で加入できる特約保険では、1事故あたり3億円までカバーすることができます。
保険料はいくらが適正か
実際に支払う保険料ですが、同じ補償内容・補償範囲でも申込先で変わります。次の頁で各境遇別のおすすめの保険を解説します。
免責金額に注意する
免責金額とは、損害の一定額部分について、契約者本人が自己負担する金額のことです。
日本医師会経由で加入する保険は、免責金額が100万円。つまり100万円分までは自腹で支払うことになります。
100万円以下の損賠賠償にも対応するには、他の申込先で1事故あたり100万円の支払限度額の保険に別途加入が必要です。4,000円程度で提供されています。
各種学会の保険や民間医局の保険では、免責金額はありません。最初から100万円以下の損害賠償金もカバーしています。
手続きの簡便さ
申込や更新を始めとする各種手続き。これが手軽に進められるかどうかも重要です。例えば民間医局では、ネット上での手続きに対応しています。
31歳以降になると、保険料はどこの窓口で申し込んでも大差はありません。年間数千円の違いであれば、管理コストも念頭に入れるべきでしょう。
その他気にする点・オプションなど
産業医特約や弁護費用特約は申込先によって、元から含まれていたり、オプションとして追加料金がかかったりします。
医賠責の主なオプションは以下の通りです。追加料金が発生する場合の金額も載せておきます。
刑事弁護士費用担保追加条項 | 800円 |
医療付随業務担保追加条項 (人格権侵害担保条項) | 800-1,500円 |
産業医・学校医等嘱託医 活動賠償責任保険 | 5,000円 |
クレーム対応費用保険 (医療業務妨害行為対応費用保険) | 8,750-15,000円 ※保険金額による |
サイバー保険特約条項 | 2,600-4,800円 ※保険金額による |
保険料徹底比較|おすすめの保険は年齢で変わる
各申込先の保険料を支払限度額別にまとめます。
大学同窓会や病院団体の保険は、各学会経由の保険と内容が似ており、一つにまとめて比べてみました。
卒後5年以上かつ30歳以下の保険料は日本医師会が最安
日本医師会に入会すると、自動で医師賠償責任保険が付帯します。つまり日本医師会の年会費が、そのまま保険料と考えられるわけです。
日本医師会ではもともと研修医に対して、15,000円の会員減免措置を用意。2023年度よりこの減免措置の適応が、医学部卒業後5年目までに拡大されました。
医師会の年会費 | 30歳以下 | 31歳以上 |
医学部卒後5年以下 | 15,000円 | 40,000円 |
医学部卒後6年以上 | 39,000円 | 68,000円 |
医学部卒後5年間かつ30歳以下であれば、年間15,000円で支払限度額1億円の医師賠償責任保険に入れます。これは他の申込先と比較しても、かなり安いです。
卒後5年以下かつ30歳以下の保険料
1事故/期間中 | 日本医師会 | 各種学会 | 民間医局 |
100万円/300万円 | – | 4,000円 | – |
5千万円/1.5億円 | – | – | 32,310円 |
1億円/3億円 | 15,000円 | 40,660円 | 41,660円 |
2億円/6億円 | – | 51,570円 | 47,710円 |
3億円/9億円 | 特約保険 | 62,400円 | 53,360円 |
日本医師会への入会には、地元の医師会での手続きが必要です。以下のページで全国の医師会HPのリンクが探せます。
日本医師会経由で申込む最大のデメリットは手続きの煩雑さです。6年目以降かつ31歳以上は医師会の年会費が爆増するため、また乗り換えることになります。
入会・退会の負担を考えると、最初から手続きが簡単な申込先を選んでおくことも選択肢です。
また免責金額として、100万円までの保険金は自己負担となります。その分も補償としてカバーするためには、別途各種学会が提供する1事故対人100万円の保険(年間4,000円)も必要です。
卒後6年以上または31歳以上の保険料は民間医局
一方で医学部卒後6年以上または31歳以上となると、日本医師会のプランは最安ではあるものの、他の申込先とほぼ同水準の価格となります。
免責金額までカバーすると、むしろ割高です。
さらに両方の条件を満たし、「医学部卒後6年以上かつ31歳以上」となると年間68,000円。かなり値が上がります。
卒後6年以上または31歳以上の保険料
1事故/期間中 | 日本医師会 | 各種学会 | 民間医局 |
100万円/300万円 | – | 4,000円 | – |
5千万円/1.5億円 | – | – | 32,310円 |
1億円/3億円 | 68,000円 30歳以下は39,000円 卒後5年は40,000円 | 40,660円 | 41,660円 |
2億円/6億円 | – | 51,570円 | 47,710円 |
3億円/9億円 | 特約保険 | 62,400円 | 53,360円 |
備考 | 免責金額0円 +4,000円 | 産業医嘱託医特約 +5,000円 | – |
手続きの手間も考慮すると、卒後6年以上または31歳以上の医師には民間医局がおすすめです。申込みから更新などすべてネット上で完結することができます。
民間医局の保険の詳細はこちら
民間医局は免責金額0円(年間4,000円程度)、産業医・学校医等の嘱託医活動賠償責任保険(年間5,000円程度)が自動で付いてきます。その分も加味すれば、各種学会の提供する保険より割安と言えるでしょう。
支払限度額2億円以上なら民間医局が安い
支払い限度額2億円/3億円のプランでは、各学会での申込より民間医局の方がさらに安くなります。
また日本医師会で通常加入している保険の支払限度額は1億円です。特約保険として追加保険料を支払えば3億円までのプランもあります。
このときの保険料は、2万円上乗せされます。特約保険の場合でも、卒後5年以内かつ30歳以下であれば35,000円と、日本医師会のプランが最安となります。
民間医局の医師賠償責任保険の魅力
31歳以上または1事故あたり2億円以上の支払限度額のプランであれば、民間医局の保険料は魅力に感じます。
もちろん民間医局は保険の代理店であり、引受保険会社は三井住友海上です。他と比較して支払いが悪いということはありません。
保険料以外にも民間医局の保険には、以下のメリットもあります。
- 免責事項がない
- 手続きがWebで完結
- 訴訟費用を補償
- 産業医業務を補償
31歳以上かつ1事故あたり1億円支払限度額のプランでは、どこから申し込んでも保険料は4万円前後ですが、このメリットを考えると有力な選択肢となるでしょう。
民間医局の保険は、民間医局への会員登録が必要です。登録・利用料は無料。下記のボタンから申し込めます。
民間医局の保険の詳細はこちら
免責金額が0円
日本医師会経由の保険では、免責金額として100万円が設定されています。100万円まで損害賠償金が支払われません。
これに対し、民間医局の保険の免責金額は0円です。つまり自己負担分はありません。
手続きがWebで完結
民間医局に会員登録すれば、民間医局のサイトで保険の手続きがすべて完了します。
- 新規申込
- 領収書発行
- 加入者証確認
- 更新
書類への記入・押印や郵送手続きも煩雑な作業ですので、Web上で完結するのは大きなメリットです。
訴訟費用を補償
民間医局の保険は弁護士への報酬や、訴訟費用も保障の対象です。
産業医業務を補償
産業医活動には医師賠償責任保険では保証されない医療行為以外の活動もあります。そこで不測の事故が生じた場合は「産業医・学校医等の嘱託医活動賠償責任保険」という別の損害保険が必要です。
日本医師会の保険では産業医特約もカバーしていますが、オプションで追加費用がかかる申込先もあります(例えば日本外科学会経由で申し込む場合、追加5,000円が必要)。
民間医局の保険には産業医・学校医等の嘱託医活動賠償責任保険が自動付帯しています。
民間医局は保険以外にも魅力あり
民間医局は本来医師専用の求人サービス。業界最高水準の求人数を誇ります。これから転職を考えている方はもちろん、スポットバイトを探している方にもおすすめです。
民間医局に会員登録すると、民間医局の医師賠償責任保険以外にも以下のサービスを受けることができます。
- 医学書が最大12%OFF
- 福利厚生サービス「メディ割」
- DOCTOR’SMAGAZINEが購読無料
民間医局のサービスについて下記記事でまとめていますので、ご参考ください。
民間医局の登録方法
こちらのリンクから新規会員登録ができます。
画面右上の新規会員登録のボタンから、申請画面へ移動します。
登録フォームに次の必要事項を記入します。
- 職種
- 専門科目
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 卒業大学
- 医師免許取得年
- 住所
- 携帯電話
- メールアドレス
ここまで入力し確認すれば、会員登録は終了です。
会員登録後に医師賠償責任保険のページから、保険の申し込みが可能です。
すべてWeb上で手続きが完了し、煩わしい作業もありません。
医賠責 Q&A Session
医師賠償責任保険における疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q1.確定申告の控除の対象になりますか?
A.なりません。
医師賠償責任保険金は高額です。控除にできればいいのですが、残念ながら保険控除の対象ではありません。
Q2.複数の病院で働いている場合はどうなりますか?
A.バイト先の病院も含めて保険の対象です。
医師業務により発生した損害賠償であれば、どの医療機関で生じた事故も対象です。
Q3.発見ベースと賠償請求ベースの違いはなんですか?
A.保険加入期間に対して、保険金が降りるかどうかの基準です。
医療事故を過去から順に、発生・発見・賠償請求の3つのイベントに分けます。どのタイミングで保険に加入していたかで、保険金が支払われるか否かが決まります。
また基準点となるイベントを、発見ベースにするか賠償請求ベースにするかでの違いがあります。
発見ベース
被保険者が事故を認識し得た時点を基準とし、その期間で保険に加入していれば、保険金が支払われます。事故発生日≠事故発見日である点に注意です。
賠償請求ベース
被保険者が訴えられ、賠償請求された時点を基準とします。遡及日が制定されていると、それ以前に発生した事故については、対象にならない可能性があります。
まとめ
おすすめの医師賠償責任保険について解説しました。2023年度から日本医師会の会員費の設定が大きく変わります。卒後5年目かつ30歳以下は日本医師会に入会が、保険料が安くておすすめです。
- 医師会に入会するのは抵抗がある
- 卒後6年以上
- 31歳以上
いずれかに該当する方は、民間医局の保険料も魅力的です。民間医局に会員登録すると、他にもメリットがあります。
民間医局に会員登録するメリットについては、下記記事もご参考ください。